『建造物耐久性確認作業員』

(給与)月給二十万〜二十五万
(募集人数)百人
(勤務時間)朝九時〜夜五時(残業あり)
(資格)中肉中背

我が社は、さまざまな会社からの要求にお応えし、人材を派遣しております。
契約の規定により、派遣先の社名は伏せさせていただきますが、
ある建造物を製造している大手企業です。

今回は、ジャスト百人の大募集。
工場で製造されたばかりの建造物の上に乗り、
耐久性を確認するのが主な仕事です。
国家資格やパソコン操作など、特別な技術はいりませんが、
男性限定、中肉中背の方に限らせていただきます。
ルックスが男前すぎる方や、個性的すぎる方もお断りいたします。

耐久性の確認作業は、前述のように、
製造された建造物の天井に百人全員で乗り、
大丈夫か大丈夫でないかを判断します。
百人全員が声をそろえて
「大丈夫!」
と太鼓判を押したものだけが、
市場に出荷されるのです。
ひとりでも
「大丈夫でない」
と判断すれば、即刻取り壊され、
はじめから作り直しとなります。

「大丈夫でない」の判断基準は、足元がぐらつく、かたむく、
へこむ、ギシギシと音をたてるなどはもちろん、
言い知れぬ不安感に襲われたりした場合も、それに当てはまります。

百人目に乗った人の「百人乗っても」という合図で、
自分が大丈夫だと判断した場合は
「大丈夫!」
と声を出すわけですが、
本当に心からその言葉を発しているのかどうか、
すぐ横で「耐久性確認作業確認作業員」がチェックしています。
曖昧では許されません。
「なんとなく大丈夫」「大丈夫っぽい」「大丈夫じゃないの?」
というニュアンスで「大丈夫」と言ったと
耐久性確認作業確認作業員に判断されると、
減俸の対象となります。
大丈夫でない建造物が市場に出回り、
消費者に危険が及んでしまうことだけは、
絶対に避けなければいけないのです。

基本的に月曜から金曜、朝九時から夕方五時の勤務となります。
出社して、まずはじめにすることは、発声練習です。
かすれた弱々しい声で「大丈夫」と言ったところで説得力が生まれませんので、
専属のヴォイストレーナーにより三十分ほどかけて、
安心感あふれる声を出す訓練を行います。

つづいて、その日のポジションを確認するためのミーティングが行われます。
六畳ほどの建造物に百人が乗り、「大丈夫」と確認後、
全員が降りるまでの所要時間はおよそ三十分。
迅速な行動と、百人のチームワークが必要となります。
一日に確認するのは十五個前後。
大量注文がきた場合は、早朝出勤や残業もあります。
ひとりでも欠けると確認作業ができなくなってしまいますので、
欠勤、遅刻、早退は厳禁です。

大手企業ということもあり、給与や休日、社会保険などの待遇は
万全ですので、ご安心ください。
ただ、ときとして「全然大丈夫ではない」という事態もありえます。
数段階のチェックを経ての最終的な確認なので、
まず大丈夫だとは思われますが、
万が一大丈夫ではなかった場合、
とくに保証はされておりませんのでご了承ください。

会社名、商品名を公表できないのが残念ですが、
年に一度、テレビコマーシャル出演も約束されており、
毎回募集が殺到する人気の職業です。
我こそは中肉中背で特に個性がないという方、
この機会にぜひご応募ください。

書き手 山田